Netflixの新作ドラマとして気になっていた「修道女フアナ・イネス」を見ました。
ネタバレも多少含むので、未見の方は気をつけて。
全7話という少し短めのドラマ。
フアナ・イネスは実在の人物らしくメキシコでは紙幣に印刷されているというから、かなり有名な作家みたい。
1660年台、メキシコがスペインの植民地時代だったときのお話。
疫病で苦しむフアナの回想という形でドラマが進んでいきます。
調べたら40代半ばで病気により亡くなっていました。
この時代、女は大学で学ぶことも、公職に就くことも、遺言を残すことも、長子相続の権利もありません。
女性差別はもちろん人種差別とか、宗教問題、王宮内での私利私欲の駆け引きも入り組んだ内容でかなり重ーい雰囲気でした。
半ば強制的に家を追い出されたフアナはスペイン副王領で侍女として働くのですが、知識豊かで詩の才能に秀でていたため王妃の熱烈な寵愛をうけることになります。
その王妃様の愛がちょっと重すぎるというか、あらすじからは分かんなかったんですけどびっくりするくらいレズビアンシーンが多いんですよ。
フアナのドレスの匂いを嗅ぐ王妃様…やりすぎ。
キスシーンはもちろん、この王妃様は寝床にまで忍んできて、最終的には二人で一緒に暮らそうとまで言ってきます。
でも、フアナは王妃様の便宜には感謝していても、愛してるってほどではなくて戸惑いまくり。
結局、王妃様にはスペインへの帰国命令がきてしまうので離れざるを得ない(しかも、すぐに病かなにかで死んでしまう)んですけど。
えー、またレズビアンキャラが死んでしまった(海外ドラマではなぜかレズビアンキャラが高頻度で死ぬ)…ってがっくりしていたんですが、すぐに新しい副王夫婦がやってきてその王妃様に今度はフアナがぞっこん。
お手てにぎにぎ。
こんなのはまだ全然序の口で、ちょっと見てるのが恥ずかしくなるくらいのラブラブっぷりが見られます。
1話でなんか浅ーい感じの男と婚約したフアナだったんですけど、速攻で別れて、あれは一体なんだったんだろ。
一人目の王妃様に寵愛され彼女が亡くなったあとで彼女の深い愛を切なく思ったり、新しい王妃様とは熱烈に惹かれ合ったり、王宮百合とでも言えばいいのかな、レズビアンドラマとしてもかなり見どころがあると思います。
(興味深かったのは、この時代背景なのにレズビアン蔑視的なものがほとんどでてこなかったこと。修道女の立場が二人の障害にはなるけれど。二人の手紙盗み見るようなミソジニーこじらせた神父が自然的ではないみたいなこと言ってたかな、ってくらい。王様も妻がフアナばっか追っかけてて愛の詩を見つけて怒っても、フアナの才能自体は認めていて女同士を責めるようなことを言わなかった)
王妃様、二人共がフアナと彼女の知性を愛し抜いてるし、その才能を守るためにどんな手も使うって感じがすごい良かったです。
フェミニズム要素ですが、これはもう最初からかなりはっきり打ち出されていました。
ヌニェス神父と王妃のやりとり。
他にも、悪魔みたいな凄まじい女性蔑視の大司教が出てきます。
このドラマ、フアナの豊かな才能に嫉妬した王宮づきのヌニェス神父がどこまでも彼女の人生の足を引っ張りまくるのでそいつと闘う話でもあるんですけど、フアナは彼の策略から王宮から修道院送りになるんですね。
神父たちの女性差別と創作活動妨害、シスターとしての生き方、王妃への愛、とか色々あるんですが、女が知識を得て学ぶことがどれだけ大変だったか、っていうのが物凄くよくわかります。
女はキリスト教について解釈を述べることさえ禁じられていて、従順と無知を求められる修道女なのに、その正反対の執筆活動を続けるフアナは最後まで波乱の人生を送ります。
特に終盤はかなりフェミニズム色が強く打ち出されていたように思います。
一旦は全てを捨ててシスターとして生きる決意をしたけれど、学問と詩への情熱をどうしたって捨てきれなかったフアナが、死に救いを求めて錯乱しながら隠し持っていた本に縋り付きペンを握って自分自身の名前を呟いて病に倒れるっていう、壮絶な終わり。
よく出来たドラマではあったんですが、個人的には凄まじい女性蔑視でフアナを妨害し続けた神父と大司教の扱いには大いに不満もあって、時代背景的にもこんなもんか、と思いつつもやっぱもうちょっとカタルシス得られるような何かがほしかった。
ラストの方になってそれまでの女性蔑視からくる愚かな行いを曇らせるような綺麗事をやらせたり、フアナに影響与えるセリフ言ったり、なんだかなぁ、って。
なんかそういう描き方が、男には相変わらず優しいって感じがしちゃうんですよね。
あれだけフアナに執着しまくった神父に、彼女への才能の嫉妬と尊敬を告白させただけまだマシなのかな。
クズはクズのまま描ききって、それ相応のひどい目に合わせてくれや、って正直思いました。
余談ですけど、このドラマのセットとか衣装見てるとゲームソフトのDAIの世界観を思い出しちゃって、あの女神信仰で男女差別がほとんどない世界をNetflixなら再現できるよなぁ、と思ってそういうの作って欲しいな、って切実に思います。
- 作者: ソル・フアナ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
- 作者: オクタビオパス,Octavio Paz,林美智代
- 出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
- 出版社/メーカー: エレクトロニック・アーツ
- 発売日: 2014/11/27
- メディア: Video Game
- この商品を含むブログ (5件) を見る