田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

小野不由美「残穢」を読了

つい先日読み終わりました。
いやー、怖かった!そして、面白かった!

残穢

残穢

怨みを伴う死は「穢れ」となり、あらたな怪異の火種となるのか──。
畳を擦る音が聞こえる、いるはずのない赤ん坊の泣き声がする、何かが床下を這い廻る気配がする。
だからあの家には人が居着かない──何の変哲もないマンションで起きる怪奇現象を調べるうち、浮き上がってきたある「土地」を巡る意外な真実。
著者九年ぶりの五〇〇枚書き下ろし、戦慄のドキュメンタリー・ホラー長編。

小野さんの代表作「十二国記」はもう何度読み返したかわかんないくらい好きで(陽子が大好き)、アニメも見ました。
屍鬼」もスリル満点でしたが、これはもっとド直球でホラーでした。

私は高校生のときになぜかホラー小説に異様にハマっていた時期があって、やたらと角川ホラー文庫などを読み漁っていたのですが、あのときをなんとなく思い出しました。

この小説は、小野さんの私小説的なスタイルで書かれており、それが作中で色々と遭遇する怪奇現象に実体験的なリアルさが加味されていて、読んでいる自分もやたらと背後が気になったり、カーテンの隙間が怖くなったり、そういう日本的なぞわ~っとするような恐怖を楽しめます。


こっからネタバレ

主人公は小野不由美自身と思われる京都在住の小説家。
本のあとがきでホラーネタを募集したところ、久保という愛読者の女性ライターから体験談の手紙が届くとこから、話は始まる。

久保さんが引っ越した東京郊外の賃貸マンションの部屋の一室で、畳を擦るような奇妙な音が聞こえてくるのだが、その原因をさぐるべくふたりはあれこれ連絡し合い、マンション周辺の聞き込み調査を開始。

調べていくと、久保さんの住むマンションは異様に人の転居が激しく、また隣の団地にも同じように人が長く住まない家が存在した。

それらは、畳を擦るような音、首を吊った女の霊、赤子の泣き声、床下から聞こえる男の声、火事など、いくつかの奇妙な共通点が見つかるが、場所が転々としており、謎が深まるばかり。

調査は躓きながらも、どんどん時代を遡り、明治大正期にまで及び、北九州にその原因をみつける。

過去に清めることのできなかった恨み辛みのこもった穢れが、人を媒介にして現代まで残り、どのように場所を移動していくのか、ミステリーみたいに解明されてゆく。

人から人へ穢れが乗り移っていくっていう話のネタは、リングにちょっと似てるのかな。

調査の段階で次々と発覚する心霊現象や残忍な事件が、なんとも不気味で、ラストの結果云々というより、その途中経過の緊張感がとても面白かったです。

とにかく、飽きることなし。

ラストもなんとも言えない怖い余韻を残していて、個人的には大変満足いく一冊でした。


そして、知らなかったんだけど同時発売された「鬼談百景」は残穢に関連しているとか。

鬼談百景 (幽BOOKS)

鬼談百景 (幽BOOKS)

残穢の作中にもあったように、作者宛てに送られた怪奇現象の体験談やホラー話をまとめたもので、これ、発売当初にちらっと本屋で立ち読みしたけど、本当に短い1ページくらいの話の連続で、あまり興味を惹かれなかったのだが、残穢を読む前に読んどくと、より楽しめるらしい。
残穢の私小説風なタッチのリアル感を増す小道具的な役割があるみたいです。
でも、もう読んじゃったし、こっちはいいかな。