ちまちま読み進めていた佐藤友哉の「デンデラ」を読み終わりました。
- 作者:友哉, 佐藤
- 発売日: 2011/04/26
- メディア: 文庫
そもそもは、映画を先に知ってそのうち見たいなぁ、と思っていたのです。
なので原作があるとは知らず、先日たまたま小説があることを知って読み出しました。
こっからネタバレを含みます。
貧しい村では、70歳になると食料確保のために「お山参り」といって雪山に男女問わず棄てられてしまうわけですが、主人公のカユが棄てられたとこから話が始まります。
寒さに凍えて気を失ったカユは、お山参りした老婆が生き延びてひっそり生活する集落「デンデラ」に運ばれ、命をとりとめます。
100歳の老婆が長老として君臨するデンデラは、自分たちを捨てた「村」への復讐を目論む襲撃派と、戦いは好まずデンデラで最後まで生き延びることを望む穏健派があり、死んで極楽浄土へ行けると思ってお山参りしたカユは、助けられて生き延びてしまったことに怒ってどちらにも属さぬまま、過酷な雪山で生活する羽目になるんですが、そこに現れたのが「熊」です。
これは子持ちの雌熊で、飢えから冬ごもりも出来ず、デンデラを狙い始めます。
そこから、50人の老婆と熊との壮絶な戦いが最後の最後まで繰り広げられます。
とにかく、一つ苦労したのは、50人全員に苗字と名前と年齢設定がついてて、キャラを覚えきれないこと…!
最初のほうに名前と年齢の一覧が載ってるんですけど、どこでどの人物が出てきたのかよく分かんなくなったりしました(;´∀`)
あと、登場人物は老婆ばかりということもあって、フェミニズム色も結構感じられました。
デンデラでは、男は一切助けないっていう主義があって、それは自分たちを棄てた村は何を決めるにしても男たちが主体だったことと関係してます。
長老をはじめとする襲撃派が多いデンデラでは、男を助けてもデンデラが乗っ取られて村と何も変わらなくなる危険があるとして、そこは一貫してました。
(でも、主人公のカユはそういう強いフェミニズム色のバランスをとるためなのか、男もそんなに悪くはない、って感じの態度でしたね…)
デンデラには呆けちゃったり、寝たきりになったりっていう老婆たちもいるんですけど、介護が必要な弱者を見捨てたら、自分たちを棄てた村と一緒になってしまうので、そこはみんなで面倒を見ていたり。
あのままお山参りで死んだほうがよかったのか、デンデラで惨めに寒さと飢えに耐えながら生き延びるのが正しいのか、っていうことを考えてる暇がないほど、とにかく熊とのバトルが激しかったです。
熊とのバトルは、途中で終わって村への復讐に移るかと思ったんですけど、最後まで熊でした。
(ユリ熊嵐といい、女と熊のバトルは何か描きやすいものがあるのかしら)
勇敢な老婆たちが熊と対峙して次々に命を落とすんですが、腕がもげたり、ハラワタがはみ出たりで結構グロい…。
そういうのが苦手な人は、読まないほうがいいかもしれません。
あと、途中で謎の疫病問題が出てきて、老婆がバタバタと死んでいくのでドキドキしていたけど、謎は結構呆気なかったかも。
結局、最終的には熊と疫病問題でデンデラは数名を残して壊滅状態に陥り、カユが熊と一対一でどう決着をつけるのか、そこでどうやって自らの生と向き合うのか、っていう話でした。
なんだか、戦争映画のヒーローみたいな趣もありますが、まぁ似たようなものかな。
映画では、どこまでこれを再現してるんだろう。
ちょっと気になるので、そのうちDVDチェックしてみたいと思います。
そういえば同じように、村田喜代子の「蕨野行」も姥捨て山制度がテーマになっていて、こっちは老いた男女が山奥で共同生活するんですが、これも結構過酷でちょっと読んでて辛かったですね。
- 作者:村田 喜代子
- 発売日: 1998/11/10
- メディア: 文庫