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田舎で底辺暮らし

貧乏喪女がネットの気になる話題など、雑多にあれこれ書いてます。

 

中山可穂「男役」の感想

book 本 百合

入手するのに苦労し、先日やっと読み終わったので、感想など書いていきます。
(ネタバレ含みますので、ご注意を)

男役

男役トップになって二日後に事故死して以来、宝塚の守護神として語り継がれてきたファントムさん。
一方、新人公演で大抜擢されたひかるを待ち受ける試練とは――?
愛と運命の業を描く中山可穂版・オペラ座の怪人!

表紙が素敵ですね。

で、内容なのですが、正直に言えば期待ほどではありませんでした…。

まず、主役は劇団に入って3年目の新人、月組の永遠ひかる
彼女がトップのサヨナラ公演で新人公演(入団して7年目までの新人のみが出演して、本公演そっくりに一日だけやる公演)の主役に抜擢されるとこからはじまります。

その退団するトップの如月すみれが劇団随一の人気を誇るという設定なのですが、とにかくファンサービスはしないというキャラクターで、これがちょっと行き過ぎててまずどうしても突っ込みたくなります。
愛想を振りまかないだけでなく、お茶会(ファンミーティングみたいなもの)もしない、サヨナラ公演の千秋楽では定番であるお神輿や白服も認めない、最後のカーテンコールにも応じないという、とにかく応援してくれる人相手にあれもしないこれもしないというのが革命児である、という描かれ方なのですが、なんというかちょっと過剰でどうにもわざとらしい…。
癖が強い芸風という設定ですが、それもいまいちイメージが掴みにくくて、ぼんやりしているように感じました。

そして、そのすみれが頼りにしているのが、劇場に住まう幽霊のファントムさん
50年前の舞台事故でトップ就任後たったの2日で死んでしまった男役・扇乙矢の亡霊です。
彼女のお披露目公演だった「セルビアの赤い月」といういわくつきの演目を、すみれはサヨナラ公演で再演するわけです。

この三人が主な登場人物。

で、この幽霊がもうめっちゃ喋るw
ぼうっと存在しているとかではなく、普通にすみれと話すし、姿も見える。
このファントムさんがひかるを気に入り、彼女のピンチを色々助けたりします。
(彼女の祖母がファントムさんの相手役だったため)

ただ、すみれのこともひかるのことも助けすぎるというか、舞台上のピンチをファントムさんが世話して乗り越えるっていうことばかりで、特にすみれはファントムさんに恋焦がれているような、物凄く精神的に頼っていて、なんだかファントムさんの助力あってのトップとか新人公演抜擢みたいな風に思えてしまうんですよね…。

新人公演の舞台でも、緊張でセリフがでてこないひかるに容易く乗り移って上手く進めちゃったりして、そこは助けたくても助けちゃダメだろって感じで、稽古にしてもファントムさんの助言だらけで、もうちょっと自前の舞台人としての力量を見せつけてくれないと、ヅカの男役としてどうも魅力に欠けるなぁ、って思ってしまいました。

設定が、本当に現代の宝塚そのもので、ファントムを「らんとむ」って聞き間違えてたり、スカイステージが普通に出てきたり、ネットのアンチネタとか、ちょっとした宝塚ファンならすぐに分かるネタだらけなのですが、のわりに気障ったらしいファントムさんの存在があまりにシュールで、入り込むに入り込めないというむず痒さがありました。

中山可穂といえばレズビアン小説なわけですが、百合的な展開としても、ちょっと物足りなかったり。
(そこを目当てに買った部分も大きかったので…)
ファントムさんが相手役さん(ひかるの祖母)を一途に思ってたりするんですけど、その相手役さんは演出家の男性に恋してたり、そして演出家はファントムさんのことが好きだったりで、ちょっといくらなんでもその三角関係はチープすぎるよ…。

でも、世間が想像するような定番の女の園は嫉妬や嫌がらせだらけ、みたいな地雷ネタは全然なく、そこはよかったです。


個人的に一番興味深かったのは、作者のあとがきです。

中山さんはとある機会があって元男役トップさんと8時間も話したとか。
そのトップさんが中山さんの本を全て読んでいたファンのようで、びっくり。
レズビアン小説好きな元トップさんって超気になる…!w

他に「感情的にならず、寛容な心でこの小説を読んでいただきたい。」、と書いてあったのですが、確かにこれはヅカへのオマージュというかファン小説的な側面が良くも悪くも大きい感じがしました。

宝塚ファンの方だと、読んでて楽しめる部分も多いとは思うんですが、一方で設定と話の大味さにフラストレーションもたまると思います。

なので、ヅカを知らない人のほうがより楽しめる一冊かもしれません。

あと、個人的には認知症なめすぎで、イラッとしました。
ひかるの祖母が介護が必要なくらい認知症が進んでいるのですが、そんな老婆が一人で宝塚の劇場まで新幹線とタクシー乗り継いでやってきて大人しく観劇するなんて、ありえないだろ…!って、そこに一番ツッコミ入れたくなりました。
(私は認知症の祖母を介護してたので)
いくらロマンチックな展開にしたいとは言っても、それはアウトでしょ、っていう詰めの甘さですね…雑すぎる。

中山氏のナルシシズム溢れる作風と宝塚の華美さがハマるのでは、と期待してたのですが、寧ろちょっと逆効果的だったかもしれません。

シュールな場面が多く、もう少し男役のストイックさを緻密に淡々と楽しみたかったなぁ、と思ったり。

しかしこれ、続編出す気満々ですね。
作中の謎が回収されてなかったり、脇役視点のものも書きたいとあとがきにあったので。
王子ミチルシリーズが完結したので、今度はこっちをシリーズ化するのかな?

男役

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愛の国 (単行本)

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