田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

西武・そごうの女性差別についての奇妙な広告を見て思ったこと

正月早々、奇妙な広告がTwitterで流れてきた。
それがこちら。

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www.sogo-seibu.jp

西武・そごうの広告で、女性差別について触れて今年は変わるだろうというような内容なのだが、TL上ではそのちぐはぐな内容に疑問を呈する人が多く見られた。

文章の前半は現在あるひどい女性差別について述べており、全くその通りである。
しかし、その後よくわからなくなる。
いきなり、そういった差別状況が今年は変わると断言し、期待していいのでしょうか、とくる。
どんだけ楽観的に考えても、それはかなり難しいだろう。
だってこの国のジェンダーギャップ指数何位だと思ってんの?確か今は110位だったよね。
しかも今の腐ったような政権下で、右傾化の状況は悪化しているわけで、議員がひどい差別発言をしても責任を取らず野放しが許されるような風潮になっている。
今の差別構造がどうにかなるなんてとてもじゃないが期待は出来ない。
そして、持て囃されるだけの女の時代なんて来ないほうがいい、と書かれている。
それも、「私たち」という女全体の代弁者がそれを述べる。
大きくキャッチコピーにもなっているが、

女の時代、なんていらない?

って、それは女たちの努力や労働、いろんなことが権力者(要するに男たち)に女だからって都合よく利用され買い叩かれるからでしょ?
その女の時代とやらを利用しているのは誰なのか、そこへの批判を強く打ち出さないと、現状の権力構造にとっては非常に都合がいいだけの綺麗事に聞こえるんだけど。
この流れ、すごい既視感あるし、そういうというとこに既得権益者は上手いことつけ込んでいくから今の現状があるわけだし。

後半になると、前半に述べた現状のはびこる差別状況がまるっと無視され『男も女も関係ない』、『「私の時代」だ』、『ワクワク』と言った、お花畑的な前向きワードが並びだす。
いや、男も女もめっちゃ関係あるよ。
ちんこついて生まれただけでたっかい下駄を履かされて、そいつらが社会的権力を握るのが今の現状で、平等なんてものは今の所なにもない。
女性が得るはずだった「私の時代」とやらを、男側に極端に偏っている権力構造が阻害しているわけで、女の自助努力ではどうこうなるものではない。
これは被差別者の個人の問題ではなくて、巨大に渦巻いている権力構造を握っている側の問題なんだから、女が『わたしは、私』とワクワクして頑張れば解決するとかそういうものではないのだけれど、この広告は肝心のそのことについて上手いこと有耶無耶にしていて、結局、女の足を踏んでいる既得権益者を居心地悪くさせることなく機嫌を損ねないとこに留まっている。
問題提起しているようで全く何もしていない。現状温存ってだけだ。

あと、疑問なのがこのパイ投げされてクリームまみれになっている若い女性への暴力的な印象を与える写真だ。
非現実的なお花畑的な女性差別がなくなることへの期待を語るのなら、なんでここまで女性を蹂躙している写真なのだろうか。
この写真では現状の女性たちは外野からこのようにパイ投げされるような有様で権利を阻害されているというようなメッセージを受けるんだけど。
文章とものすごいちぐはぐで、若干怖い。
女性へのエンパワーメント的意味合いでやるなら、女性たちの怒りや連帯を表すものでないと意味わかんないし、なんで黙って立ってる女性がこんな有様になっているのか。
せめてパイぶつけられるのは権力構造握ってる男側でしょ。

これ動画広告もYouTubeにあるのだが、新聞広告よりは幾分ポップな感じではあるもののやはり同じ印象。
むしろ文章読み上げてる女性が「男も女も関係ない」とか現状で言わされちゃってるのが、結構怖い。
youtu.be

西武・そごうはこの広告で一体なにを訴えたいんだろう。
まず自社で女性差別撤廃への具体的な取り組みをなにかしているんだろうか。管理職の女性の割合は?賃金格差は?

という感じで、これは女をエンパワーメントするどころか差別構造に乗っかって足踏んでる側を上手いこと隠蔽してしまって、現状の下駄履いてる権力者にかなり都合のいい広告では?
一見、何か良いこと言ってる風だが、よく見たら何が何やらよく分からない奇妙なものを元旦から見せられてしまった。