田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

羽生選手の怪我を、感動として消費するのはどうしても抵抗がある

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引用:http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20141108-1393737.html

Twitterは羽生選手で大盛り上がり。

フィギュアスケート、グランプリシリーズの第3戦である中国大会がテレビ放映されていたらしく、TLは阿鼻叫喚であった。

演技前の練習中に羽生選手はものすごい勢いで中国人選手と激突し、両者は転倒。頭を打って、顎や口元から出血。

明らかに脳震盪と思われる様子で、ふらふらと歩く羽生選手に、TLではみんなが心配から「棄権してくれ!」と叫んでいた。

他のスポーツなら、当然担架で運び出されるとこだろう。

しかし、羽生選手は頭に大きな包帯を巻いて出場。
転倒はしたが、4回転を成功させ2位で表彰台にのぼった。
(私はあとでNHKのスポーツニュースで見た)


なんというか、「物語」としてはこれ以上のものはないって感じで、アナウンサーも「美談」として絶賛していたようだ。

Twitterでも「涙がでるほど感動した!」って声が多く見られた。

スポーツにおいて選手たちの鬼気迫るプレイ・演技というのは、フィクションを凌駕する感動を与えてくれるものなので、その気持ちはわかる。

しかも、羽生選手はこの大会で表彰台にのぼらなければ、グランプリファイナルには出場ができない可能性が高いということらしいので、選手は当然死に物狂いで何があっても出場したがるだろう。


しかし、それでもやっぱり今後のフィギュアスケートというスポーツの発展を思うのなら、棄権するという良識を周囲のスタッフやスケート連盟が持つべきだったのでは、と疑問を感じる。

脳震盪は非常に危険で、過去にスポーツ選手が実際に命を落としている例もある。

 脳震盪後、著しい症状は消失しても頭痛が続いている場合は注意が必要だ。脳と硬膜を繋いでいる血管から出血している可能性があり、また出血していても量が少ないためCTスキャンでも発見されないことがあるからだ。頭痛のままスポーツを再開し、再び脳震盪を起こすと命に関わる。以前に出血した血管の瘡蓋(かさぶた)がとれて出血し、急性硬膜下血腫を起こし、さらに脳が腫れて死に至る。

 頭痛がある2回目の脳震盪による死亡率は30~50%と高い。

スポーツで起こる脳震盪 命の危険回避に専門家の診察不可欠│NEWSポストセブン

ちょっと足をくじきました、とかそういうレベルではなく頭なんだし、万が一の危険があると誰もが分かっていて、それでも強行したのはやっぱマズかっただろうなぁ。

また、羽生選手もこういうトラブルがやたら絵になるというか、怪我で血を流してる姿さえなんだかお耽美で、見てる方としては余計に盛り上がっちゃうし、それで凄まじい精神力でああいう演技しちゃうんだから、なんとも皮肉である。
彼の「困難」を乗り越えた演技に魅了されて「選手が命かけて頑張ったんだからごちゃごちゃ言うな」って声をあげる人も少なくないだろうけど、そのせいで何度もこういうことが繰り返されるんだろうなぁ。

でも、たまたま今回は何事もなかったとして、今後もこういうアクシデントが起こるたびに、たまたまずっと何事もないはずなんてなくて、絶対にいつか惨事が起こるだろうし、今回のことを教訓にきちんとドクターストップを用いるとか、選手の健康のために一定のルールを用意するべきだと思う。
※サッカーやアメフトなどは、選手の命にかかわるので、非常に厳しい指針が設けられている。
Jリーグにおける脳振盪に対する指針|メディカル関係者向け情報|メディカルインフォメーション|サッカーファミリー|JFA|日本サッカー協会


そして、スポーツを消費する視聴者もそういうリテラシーというのか、感動すれば何でもいいってならずに、きちんとした意識を持ってないといけないんじゃないのかな、とも思う。
そういう感動を求めるのなら、フィクションに求めるべきなんだし。

暫くはメディアで、この「美談ネタ」が繰り返し流されるんだろうなぁ、と思うとやっぱどうしても気持ち悪いというか、うんざりしてしまうね…。

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