- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「どうして人の命の重さには違いがあるの?」東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。
夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。
実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。
そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。
実家で何があった?明らかになっていく家族を襲った出来事とは―。
『サクリファイス』の著者が「命の重さ」を描く渾身ミステリー!!
近藤史恵の作品はいくつか読んでる。
この人の文章はすごく読みやすいので、あっという間に読み終わってしまう。
これもそんな一冊だった。
タイトルから、読んでる途中はクローン?なんて思って、家を売る展開になるとホラーじみてて、ちょっと怖くなったが、結局別にそういうのは全然なかった。
こっからネタバレ。
それまで仲の良かった平和な家庭だったのに、なぜかギクシャクしている三人の原因は、まだ高校生の歳の離れた妹・美和が中学生だったときに妊娠・堕胎していたことだった。
しかも、相手は近所に住んでいた当時21歳の大学生で、父親は激怒して恋愛関係にあったこの男と無理やり破局させ、男の内定先に中学生を妊娠させたとバラす。
相手を追い詰めた結果、男はまだ新築の家の庭までわざわざきて、自殺。
それに関連して、美和の親友まで自殺していた。
そのせいで、噂が立って家を売ろうにも買い手が見つからない状況。
父親は、それまで出来のいい娘だと溺愛していた美和に対して、処女厨のごとき手のひらを返した態度で、冷たくあたる。
遼子が帰省していたほんのひと時だけを、家族ごっことして体裁を整えていただけだったけれど、結局美和は追い詰められて家出。
徐々に家族の歪の真実に気づく遼子は、身重な体で妹を助けるべく両親との間を取り持つ。
なんというか、父親の歪みっぷりの描写がなんとも絶妙で、自分の思い通りにならない娘にきちんと向き合わないくせに、父親としてのプライドだけは保ちたがるので、どんどんことが厄介になっていってて、それに遼子がブチ切れる展開はなかなか爽快であった。
容姿も恵まれ頭もいい妹が15で妊娠し、堕胎させられ、両親からも責められる一方で、ちょっと打算的に結婚した姉の妊娠は祝福される、その線引はなんだろうと問う。
わりとありきたりなテーマではあるが、これらを鋭く指摘している文章は読んでいて小気味良かった。
しかし、個人的にはいくら恋愛関係だからって21の男が15の少女と肉体関係を持つってグロテスクすぎて、この男が死んだことには別に同情の余地はない(ひどい
まだ子供の美和がそれらに巻き込まれ追い詰められたことは可哀想だけど。
なんつーか、とにかく性教育って超大事だな、ってことだ。
肉体関係を持つにしたって、ちゃんと避妊していればこんな悲劇にはならずにすんだだろうに。
妊娠出産の代償は結局、女が背負うことになるのだから、やっぱりそこはきちんと教育しておくべきことだと思う。
いくら素敵な家族ごっこができたって、こういう臭いものには蓋でスルーしてたら、こういう悲劇を招く可能性が高いわけだ。
①東京都教育委員会「性教育の手引(高等学校編)」http://t.co/qLDgkQSNvb
100ページの冊子に避妊の語が1語もない、というすごさ。
— ピルとのつきあい方(公式) (@ruriko_pillton) 2014, 11月 25
最終的に、熱い姉妹の絆で自暴自棄になる美和を更生させるのだが、ラストで一気に後味が悪くなるので、好き嫌いはわかれる作品かなぁ。
読み終わってみると、要素的には私の苦手なものが非常に多かった。
男女関係の末に女性がこういう悲惨な目にあってるストーリーって、すごく疲れる…。
少女の性のあり方に家族や社会がどう向き合うのかって問題提起の本としては、読みやすいしとても良いと思うんだけどね。
ちなみに、私はこの著者の「さいごの毛布」というコミュ障な女性が老犬ホームで犬と触れ合うことで成長するって作品が好きだ。
主人公に男女の恋愛が全然絡まず、犬と一対一で向き合っていたのがとてもよかった。
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/03/26
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あ、百合作品もあるよ!
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/08/02
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