ついさっき、森薫の「乙嫁語り」第7巻を読み終わりました。
昨日、あらすじや人様の感想をちらっと読んだら、私の百合アンテナが反応したので、さっそく今日ゲットして読んでみたわけです。
- 作者: 森薫
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2015/02/14
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (9件) を見る
今回は、英国人スミスの逗留先であるペルシア(現在のイランを表す古名らしい)の富豪宅の奥様、アニスが主人公。
表紙に描かれているほっそりした女性です。
イスラム文化ということで、男女は交流することがないので、スミスは最後まで奥様と顔をあわせることもなく、出番はあんまりないですw
こっからは、ネタバレ混じりの感想なのでご注意を。
アニスには生まれたばかりの子供がいますが、そこはお金持ちの奥様ということで子供の面倒はお手伝いさんのマーフという女性がみてくれているので、特にすることもなく、日がな一日モジャモジャの猫(ペルシャ猫)をかわいがっているか、水辺で鳥と戯れているかで、どこか少女のように儚げな女性です。
経済的にもめぐまれており、一夫多妻制の文化圏でありながら夫はアニス一筋で、何不自由ない暮しなのですが、一日中1人でいるからか、幸せなのに心に抱える物寂しい気持ちをマーフに打ち明けます。
マーフは「姉妹妻をもつべきですわね」、と提案。
既婚子持ちの女性同士が姉妹の契りを交わして、生涯を大事な親友として支えあうというのが姉妹妻らしいのですが、あとがきによりますと、イスラム文化圏の縁組姉妹といわれる風習をモチーフにしたとかで、実際に19世紀頃まであった女性同士の結婚みたいな制度です。
(ちゃんと結婚式して、新婚旅行して、死後は財産分与するらしい)
それで家に閉じこもりがちなアニスはマーフに連れられて友達作りのために、街のなかにあるお女湯(蒸し風呂みたいな交流の場)に通うようになります。
そっからがもう裸のオンパレードで、これでもかってくらい女性のヌードシーンだらけです。
そこでアニスは、豊かな黒髪の豊満な女性に一目惚れ。
寝ても覚めても、その女性のことばかりを考えてる始末。
初恋のようにどぎまぎしながら、マーフやマーフの姉妹妻らしき女性にからかわれつつ風呂屋でこの女性、シーリーンとお近づきになろうと必死のアニスが可愛いw
一目惚れの理由が、可愛がってる真ん丸のモジャ猫に似てるというのも笑えます。
アニスは大金持ちで成長期前みたいなほっそりした身体つきで少食、一方でシーリーンは貧しい家庭で豊満な身体つきで大食い。
何もかもが正反対の二人ですが、アニスは気持ちを抑えられずに姉妹妻になってほしいと告白。
シーリーンもこれを受け入れ、風呂屋にいた老婆が仲人となり、式の日取りだなんだって女湯は大騒ぎ。
誓いの言葉を述べて、結婚式をして、幸せの絶頂にあった二人ですが、百合に不幸はつきものということなのか、シーリーンの夫が卒中で死んでしまいます。
幼子を抱えた貧乏未亡人になってしまったシーリーン。
亡くなった夫の年老いた両親も抱えて、さてどうするってとこで、予想通りの展開といいますか、アニスが夫にシーリーンを第二夫人として迎えて欲しいと直訴。
慈悲深い夫は、アニスが嫌がると思って他に妻をもたなかったわけですが、妻がOKで、困窮者を放ってはおけないと、子供はもちろん、年老いた両親も家に招き豪華な別宅を用意。
とにかく、大切な姉妹妻と一緒に暮らせるし、色々あったけどすべてが上手くおさまったという話でした。
しかし、風呂に通うのも、姉妹妻を助けるのも夫の判断を仰がなければならない、そしてシーリーンを助ける手立てが自分の夫の妻にすること、というのは正直ちょっと読んでてしんどいものがありました。
女性が経済的に自立していないって、なにかあったときに自らを救う手立てがないってことでもありますからね…。
さて、女性同士の結婚的な関係というと、村田喜代子の「雲南の妻」という小説があります。
- 作者: 村田喜代子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/09
- メディア: 単行本
- クリック: 11回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
これは中国の少数民族の女性と、日本からお茶を目当てにやってきた中年夫婦の妻が結婚して3人で生活するって話なんですけど、中国では金持ちの男が、妻が女性と仲睦まじくしている様子を愛でるような文化があるみたいなシーンがあって、ただそれってどこか女性を観賞用として自分と対等には扱ってない感覚が垣間見えて、うげーっ、てなったんですよね…。
今回の乙嫁語りは、なんとなくそんなことを思い出したり(夫は姉妹妻にちょっとジェラシー感じてましたが)。
とにかく、百合としては非常に美味しい7巻でしたが、男性が介在してる百合が苦手という人は微妙な気持ちになると思います(私もモヤモヤっとしたものが残った)。
森薫氏、女性のヌードをここまでいきいきと描くなら、もう直球で百合な話を描いてくれないかしら…と、いうのが私の願いです。