田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

「村上さんのところ」の回答にがっかりした

村上春樹が質問に答える期間限定のサイト、全然ノータッチだったのだけれど、Twitterで見かけたのがちょっとあまりにアレだったので気になって目を通してみた。www.welluneednt.com

質問者は18歳の女性で、自分だけが「女」だからという理由で夕飯の手伝いを命じられるという相談。
一歳年下の弟はそんなことをいわれることもなくゲームをしているらしい。
手伝いは別に嫌ではないが、「女なんだから」という理由と、弟だけが家事手伝いをせずに優遇されている状況に納得できず悩んでいる様子。

母や祖母に「どうして弟はしなくていいのに、私は手伝わなくてはならないのか? 弟にも仕事を振り分けたら?」と言うと「あなたは女の子でしょう」と言われます。

男女差別だと反論しても、「しょうがないでしょう」と相手にしてくれない。それどころか意見すると、この女性が怒られてしまうこともあるとか。

もう諦めるべきなのか、納得できる答えを貰えるまでしつこく質問するべきなのか?っていうことなんだけれど、家父長意識が強く、女が飯炊き要員状態の家庭で女に生まれると本当に大変だろうな、と思う。
うちも似たような雰囲気の家庭環境だったので、この理不尽な状況への不満は非常に共感できる。

それに対する村上氏の答えは、自分も一人っ子で男児だったので甘やかされて全然家事の手伝いをしなくてすんだ、でも大学生になって家事スキルを自ら習得した、という経験談を語り、その後このようにアドバイスしている。

弟さんのことは気にしないで、今のうちにしっかりと家事のやり方を身体にたたき込んでおきましょう。
あとになってきっと役に立ちます。「女だから」「男だから」という親たちの言い分は無視しておいて良いと思います。
何はともあれ、まずは自分が強くなることが先決です。

これを読んだ感想としては、「なんだそりゃ」だった。

弟を気にしないなんてことはまず無理だよね。
それがこの相談の根っこの部分でもあるのだし。

そして、村上氏のように自らの意志で家事スキルをアップしたり、自分から率先して手伝うことと、「女だから」って理由で家事を強制されるのは全然別なのであって、役に立つとか立たないとかって話でもないと思う。
後で役に立つから、弟も親も無視して、家事能力は身につくんだから現在の理不尽な差別に目を瞑れ、ってそれはいくらなんでもないんじゃないの…。

そして、それを受け入れることは別に強くなることではないと思う。
この女性は、ちゃんと不満と疑問をきちんと親たちに質問して、怒られることがあるのに、納得できる答えを引き出そうとねばっている。
その姿勢は私には十分「強い」って思えるし、村上氏のアドバイスのどこが強くなることなのか、よく分からない。

そんな強さは、強者に都合がいいだけで、この女性がいいように利用されるだけだと思う

家事スキルなんて必要になれば否応なく身につくんだから、そんなのは二の次で、もっと狡猾にやり過ごして、さっさと家を出たほうがいい、と言いたい。
こういう家は、間違いなく家事だけでなく、介護なども女の仕事になるからだ。
うちがそうだったから間違いない。

家事も大変だが、介護は物凄く精神が病むので、これは本当に切実にこの相談者さんに伝えたい。

女だから、って理由で色んな無償労働を強いられるので、そういうのを後々押し付けられないように実家と距離を保てる生き方を学生のうちから探しておけば、色々と選択肢が増えると思う。

被差別者に対して「あなたが強くなりましょう」なんてトンチンカンなアドバイスはスルーして、現状の理不尽さを親に訴え続けていいと思うし、家族が聞く耳をもたないのなら、家を出るなりして性差別をできるだけ受けない生き方を掴みとって欲しい。

家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの (岩波新書)

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母がしんどい

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