田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

パトリック・レドモンド「霊応ゲーム」を読了

霊応ゲーム (Hayakawa Novels)

霊応ゲーム (Hayakawa Novels)

ネタバレ含むと思いますので、ご注意を。

1950年代にあったイギリスの名門男子校で起きた事件の真相を探り当てたジャーナリストが、事件の当事者にインタビューするというかたちで始まるストーリー。

主人公はジョナサンという、歴史が好きな気の弱い14歳の少年。
家柄の良いお金持ちばかりがいるカースト制のはっきりした雰囲気の学校では、父親が銀行に勤めてるというだけの庶民なジョナサンはかなり冴えない存在。
そのせいか、意地悪なラテン語教師には毛嫌いされ難しい問題をあてられては、いつもクラスの笑いもの。
そんなジョナサンが家柄も容姿も頭脳もずば抜けてるが人嫌いで一匹狼のリチャードとふとした切っ掛けで仲良くなってから、クラスの超ワルガキグループに目をつけられてしまう。
リチャードはジョナサンをかばってくれるけれど、それが徐々にエスカレートして、しかも奇妙な不幸が二人の周りで起き始める。

ジャンル的にはゴシックホラーなのかな。
何に驚いたって、かなりボーイズラブ的というか、こういうのブロマンスというんですかね?
古い名門校で、男子寮生活で、そういう閉鎖的な環境の中で対照的な美少年二人が徐々に心を通わせるって、王道中の王道というか、好きな人には堪らないだろうなぁ、って。
しかも、教師と生徒のゲイカップルもでてきます(ゲイに対する罰則があった時代背景のせいで悲惨ですけどね…)。

元々は2000年に出版されてますけど、最近文庫が出たみたいですね。

霊応ゲーム (ハヤカワ文庫 NV レ 5-1)

霊応ゲーム (ハヤカワ文庫 NV レ 5-1)

表紙がいかにも(笑
でも、内容はこれ以上のものがありますよ。

何が素晴らしいって、この作品はジョナサンとリチャードはもちろん、彼らを取り巻くクラスメイトや教師陣などそれぞれに細かい家庭環境、複雑な人間関係がミステリーのようにかなり緻密に練られてるところです。
リチャードはかなり複雑な家庭環境で、その影響もあってかジョナサンへの独占と支配欲が強く、自分たちの仲を邪魔するような人間に凄まじい憎悪を抱きます。
憎んだ相手を徹底的に追い詰めるのですが、登場人物たちそれぞれが抱える問題をリチャードは上手く利用していくんですね。
そこに奇怪な超常現象のようなものまで関係してきます。

ここまでリチャードが暴走した切っ掛けが霊応ゲームに手を出してしまったことだとしたら、もし手を出さずにいたら二人の関係はどういうふうになってたのかなぁ、と読後にしんみり。
あ、霊応ゲームというのは、日本でいうコックリさんです。

かなり破滅的な最後ですし、最初はリチャードに強い憧憬を抱いていていたジョナサンですけど、後半はジョナサンの支配から逃れようと必死なので、ハッピーエンドを期待して読むものではないのですが、物語としてはぐいぐい読ませるしかなり面白いのは確かです。

これ、少女版だと栗本薫の「六道ケ辻 ウンター・デン・リンデンの薔薇」というのがあります。

六道ケ辻 ウンター・デン・リンデンの薔薇 (角川文庫)

六道ケ辻 ウンター・デン・リンデンの薔薇 (角川文庫)

こっちも大正ロマンな時代背景で、女子校のいじめられっ子な気弱な少女と、強烈なカリスマ性を持つ一匹狼の少女が惹かれ合って、いじめっ子たちに次々と不幸が起き始めるというそっくりさ。
因みにこっちは、霊応ゲームとは逆にどんどん二人の世界にのめり込んで、そういう意味で破滅的な最後になります。
耽美的で完全に百合な作品です。