田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

少しずつ予想を裏切ってくれる百合漫画「やがて君になる」の感想

面白いという感想をちらほら見かけたので、Kindleで購入してみました。

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

  • 作者:仲谷 鳰
  • 発売日: 2015/10/27
  • メディア: Kindle版

人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える新入生・小糸侑は、生徒会の先輩・七海燈子が告白を受ける場面に遭遇する。
誰からの告白にも心を動かされたことがないという燈子に共感を覚える侑だったが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。
「私、君のこと好きになりそう」

表紙右の二つ結びの女の子が侑です。
そして、何でも優秀でモテモテの生徒会長候補が、左にいる黒髪ロングの七海先輩。

侑はAセクシュアルというか、誰かに対しての「特別」という感覚がわからない自分を自覚していて、中学のときの男友達に告白されたことで悩んでいます。
相手のことは嫌いじゃないけど、恋愛感情はない。
その時、ちょうどモテモテの七海先輩が校舎裏で告白されているのを目撃。
七海先輩は「誰に告白されても付き合う気はない」といって、告白を断ります。
理由は「誰にもどきどきしなかったから」。
自分と同じ七海先輩に、侑は自分の悩みを打ち明けます。
それを切っ掛けとして、七海先輩は「特別がわからない」侑を好きになってしまいます。
生徒会長選挙に侑を強引に引き込む七海先輩と、恋愛感情を示されて困惑しながらも七海先輩のことが嫌じゃない侑、という話。

f:id:pokonan:20151104232435j:plain

正統派美少女の生徒会役員と、ひょんなことから生徒会のお手伝いをするかわいい後輩の女子高生百合って、まぁマリみてからの系譜というか、王道すぎるくらい王道ですよね。
正直、またこれかよ!っていう設定です。
でも、読んでいくと、テンプレなとこからはちょっとずつずれてる。
二人の関係の障害になるのは女同士以前に、侑が他人に特別さを感じないこと。
だから、別に嫌いじゃない七海先輩とも付き合う理由がない。
でも、七海先輩は侑のその部分に惹かれてしまっているのが、作中でちらっと出てきます。

これは、後々の展開でどう決着をつけるのかはとても難しいな、と思います。
百合オタとしては、二人が結ばれてからのあれこれを期待したいけど、それって侑のこのセクシュアリティを「矯正」しちゃったように見えるのでは…? でも、つかず離れずでは百合要素が薄味になりそうだし。
あとがきでは、作者さんが女の子同士の話を同人などで色々描いてて、ここらできちっと「恋愛物」を描いてみたいってことらしく、タイトルからも予想する限り、とりあえず付き合うって展開にはなりそう。

一方で、女同士というのはほとんど問題視されてはいません。
極端な嫌悪を現すような人物は誰もいないし、侑のおねえちゃん(彼氏持ち)なんかは、七海先輩のことを普通に「彼女?」なんて言ってます。
最近は、女の子同士だけをメインテーマにしてももう出尽くしちゃった感あって、「禁断の愛」の量産になるだけですもんね。
百合以外の部分でストーリーに奥行きを持たせているのが、結局は面白い百合なのかも。
侑が自分のセクシュアリティと七海先輩との関係をどう折り合いつけるのかは、今後も見どころです。

脇にも結構良いキャラが揃ってて、侑の友達は可愛いものが好きじゃなかったり。
f:id:pokonan:20200916174207j:plain

七海先輩の親友が侑に入れ込むさまにイラッとしてたり。
f:id:pokonan:20200916174048j:plain
こういう三角関係、大好きよ!
ってわくわくしたんですけど、すぐに和解してました。残念w

この1巻は、すごく善良な漫画でした。
登場人物もいい人達ばかりで、絵も綺麗ですし、百合初心者でも読みやすい一冊だと思います。

個人的にはもう少しアクがあった方がいいかな、と思ったんですが次巻の予告(来年の春出るらしい)では、キスシーンまで踏み込むっぽいし、七海先輩の清く正しい仮面もちょっとずつ剥がれていきそうで楽しみ。