田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

おばちゃんたちが山で迷子になるコメディ映画「滝を見にいく」の感想

Netflixにあったので見てみた「滝を見にいく」。
あらすじとしては、紅葉狩りと温泉のツアーに参加したおばちゃんたち7人が、ヘッポコガイドのせいで山に置き去りにされてしまい、ガイドを探したり下山しようとするも上手くいかずに遭難し、熊が出るかも知れない山で一晩を過ごす羽目になるというコメディタッチな作品。
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これが思いの外面白い作品でした。
派手な見どころがあるってわけではなく、登場人物も限られていて少ないのですが、冒頭からみんなむしゃむしゃお菓子とか茹で卵とか色んなモノ食べてたりして、おばちゃんたちの日常的な演出とか小ネタがかなりクスッとさせる映画です。
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腰痛だったり五十肩だったり、体に不調を抱えつつも、助け合ったり、ちょっと衝突したり、自由に趣味を楽しんだり…でも7人でゆるく纏まりながら一晩を凌ぐために今まで培ってきた生活力で即席キャンプを開始。
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細かいやり取りとか演出がこの年代の女性じゃないと表現できないネタで溢れてて、本当笑えます。
そして、おばちゃんと言えども、大人しい人、好戦的な人、人懐っこい人、色んな人がいて、それぞれに結構波乱万丈な人生を歩んできた背景が少しずつ見えてきます。
そうやって40年以上生きてきた女性たちが山で迷ったときに発揮される、たくましさとユーモアと連帯は見ていてなんだかパワーを貰えるというか、もっと自由に生きていこうって気にさせてくれます。
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序盤、夫がいること前提で話を振られるシーンがあって、怖っ!と思ったんですが、実際は離婚経験者がちらほらいたり、別に結婚してなかったり、既に死別してたり、お決まりの表面的な会話だけでは分からなかった事情が少し友情が芽生えて本音を打ち明けるとこで見えてきて、おばちゃんたち自身もこういうマジョリティ性に頼った会話って案外地雷なのかな、って思ったり。

救助を待つ間、皆で縄跳びしたり、蛇見つけて大騒ぎしたり、本来抑圧されがちな女性たちのこういうのびのびした姿に癒やされました。
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天使の顔をして、蛇を掴み皆を追いかけ回すジュンジュン…。

個人的に、意見がぶつかりがちだった発言力ある二人(しかしリーダーシップがあるってわけではない)が、二人きりで気まずいながらもタバコを分け合うシーンがなんだかニヤッとするというか、ちょっとロマンがあって良かったです(笑)
エンドロールも楽しく見れて、おばちゃんたちがわちゃわちゃ楽しげにやってるという、なかなかおすすめの作品です。
こういう中年女性たちをメインにした楽しい作品、もっと増えて欲しいな。

ちょっと思ったのは、途中で「恋の奴隷」を皆で歌うシーンがあるんですが、私をぶって~みたいなああいう超時代錯誤な歌を遭難したことで自由にやってる女が歌うってのが海外作品ならフェミニズム的な皮肉ってピンとすぐにくるんですが、邦画って徹底してフェミニズムを忌避したがるせいかそこまで考えられてはいないただの偶然なのか…みたいな部分で半信半疑になるというか、素直に受け取れず疑わなきゃならない信頼感がないのがめっちゃ損してるな、って。
中~高齢女性をこんだけ沢山出演させてる作品でフェミニズムを避けて通るなんて絶対無理なわけで、なんかそういうとこへの安心感がないのが、これまでのツケって感じがするんですよね…もっとその部分に注力していかないと、作品への信頼性って部分でも海外と差が開いていくな、って。

あと、これは日本語ですけど字幕で見るのをおすすめします(ネトフリだと字幕があります)。
7人それぞれにクワマンとかユーミンとかあだ名があるんですが、初見ではそれを把握するのがなかなか難しく、しかも会話がもそもそっと喋るやり取りを同時にあちこちでやってたりして、かなり聞き取りにくいので、字幕だとその辺が可視化されてすっと理解しやすかったです。

公式サイトでは7人の詳しいキャラ設定などが見れました。
takimini.jp

ただ、これ欧米辺りで同じ設定だったら七人のうち絶対一人はレズビアンいたよな、っていう残念さはちとありました。
邦画にそこまで期待するのは、欲張りすぎって感じなのかな。

滝を見にいく

滝を見にいく