田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

台湾のホラー映画、Netflix「呪詛」の感想【ネタバレ注意】

台湾発のホラー映画です。原題は「咒」。
今や誰しも気軽にスマホなどで動画撮影できるという点をうまく利用したミステリー的な要素もある面白い作品でした。
ネタバレも含みますのでご注意を。
youtu.be

ストーリー

基本、主人公のルオナンという女性の自撮り動画で進んでいきます。
里子に出していた幼い娘を引き取り、一緒に生活する様子を記念のためにずっとカメラで撮影しています。
しかし、引き取った初日から自宅では怪奇現象のオンパレードで、怖い怖いw
そもそもは、6年前にルオナンが恋人たちと遊び半分のオカルト動画撮影で、恋人の親族がいる山奥の集落へ向かったのが始まり。
そこは、大黒仏母という神を崇める信者たちの集落でした。
娘の様子がどんどんおかしくなっていくのを、どうにか食い止めようとするルオナン。
6年前に何が一体あったのかを紐解きながらストーリーが進んでいきます。

自撮り以外にも、ドライブレコーダーや監視カメラ映像などを織り交ぜているんですが、無機質な定点映像の不気味さを上手いこと利用しててナイス演出でした。

初っ端から恐怖の出し惜しみなし、って感じでぐいぐい進んでいきます。
一昔前のジャパニーズホラーを上手く進化させたような感じといえばいいのか。
物凄いCG技術とかじゃなく、ジメッとした土着的な恐怖と密教、そして人間の愚かさの組み合わせが、まさにタイトル通り。

虫が沢山出てくるので、苦手な人は注意してください(笑
集合体恐怖症の人もキツいかも…。
特殊メイクはチープさもなくなかなか気合入ってました。

そして、キーになるのが身を守るための奇妙な呪文。

作中、度々お経のように不気味に鳴り響く呪文。
祈りを唱えて、と何度か撮影中のルオナンがこちらへ訴えかけてきます。

ルオナンの娘を一時的に預かって里親をしていた男性はルオナンに協力し、大黒仏母の謎を解こうと雲南にいる密宗の和尚に会って、この呪文や信者たちの素性を探るのですが…。

とにかく、お調子者を海や怪しい集落に連れて行ってはいけない!(サメ映画からの教訓)

ここからネタバレ

ルオナンの恋人の祖先が大黒仏母というインド由来の邪神を崇拝したために代々業障を受け継いでおり、山奥の集落で封印されていた大黒仏母をルオナンたちがむちゃして暴いたために、当時知らず妊娠中だったルオナンの娘にもその祟りが受け継がれてしまいました。
お祈りするときに捧げた名前とその祟りが深く結び付いてて、冒頭で娘がルオナンに教えられて自分の本当の名前を書いて読み上げると、その直後からヤバいことがバンバン起き始めます。

そして、ルオナンが一緒にと呼びかけてくる呪文は、「名前を捧げて一緒に呪いを受ける」という意味。
ルオナンは妊娠中の6年前に、既にこの密宗の和尚に会いに行って、その意味を知っていました。
魔除けどころかこの呪文こそが呪いの拡散であって、映像を見ている人間たちに呪いを広げるためだった、と最後に明かされます。
主人公は熱心に動画を撮影して、呪いを多くの人間に広げて娘に祟りの影響が集中しないようにしていたわけです。

終始、娘を救うために奔走していたルオナンですが、善良なように見えて、娘に無理な断食をさせ病院送りにしたり、嘘をついて人々を呪いに巻き込んだり、ルオナンが呪いの元凶である大黒仏母と被ってるというか。
「愛」を理由に、愚かにも残酷にもなりうるっていう人間の悍ましさと哀れさも描いています。
(人知を超えたものに狙われて逃げようがないから仕方ないけども)

その大黒仏母ってなんじゃろ、と思ったんですが、インドから伝わってきた大黒天(日本では福々としたイメージだけど元々は破壊神)と人間を食らう鬼子母神を組み合わせたような架空のものですね。
考察のまとめを読んでみたら、ガマガエルが蠱毒の生き残りで仏母との触媒となっているとか、流産したはずが蠱毒のお陰で娘が生き残り仏母が娘に宿っているとか色々びっくりな情報がありました。
(だから虫が沢山出てくる)
考察好きな人も楽しめる作品かなと思います。

最後のお城が云々は壊滅した村へ帰りたいっていう仏母が娘に宿ってることを示唆してるみたいですね…。

ネトフリ版呪怨が本当に最悪の出来だったので(まだ文句言ってるw)、おっさんじみたエロを下手に混ぜないでちゃんと真面目に上質なホラーやってるの見ると羨ましい限りです。

あと、余談ですが不妊の男性(ルオナンの娘の里親)っていうのは小説の比嘉姉妹シリーズでも登場しますが、血統主義、家父長制、出生などと親和性の高いホラーにおいてそれらとは対照的なポジションのキャラとして使いやすいのかな、と少し気になったりもしました。

ちらっと映る街中のポスターや看板が漢字なので意味が大体分かるのがちょっと面白かった。

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