田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

笙野頼子「愛別外猫雑記」を読了

笙野頼子の本はこれが初めてで、動物エッセイなら入りやすいかなと思って手にとった。

愛別外猫雑記 (河出文庫)

愛別外猫雑記 (河出文庫)

元々はTwitterで著者の「未闘病記」が話題になっていたので、それに手を付ける前にどういう作品を書いてるのか、まず読んでみようと思ったのだ。

しかし、これがちょっと思っていた感じとは違っていた。

猫のために都内のマンションを引き払い、千葉に家を買ったものの、そこも猫たちの安住の地でなかった。猫たちの為に新しい闘いが始まる。涙と笑いで読む者の胸を熱くする愛猫奮闘記。全ての愛猫家必読!

あらすじはこんな風だが、引越し先の千葉のことはちょこっとだけで、引っ越す前のマンション暮らしのことがメインだ。
そこでどんなひどい目にあって、引っ越しを決意するはめになったか、ということがあれこれ綴られている。

まず、文章が結構わかりにくくて、時系列があちこち飛ぶし、突然知らない猫や人が現れたりして、説明もないままどんどん進むので混乱した。

読んでいけばなんとなく掴めるのだが、そのなんとなく把握しなきゃならない部分が多いというか…。
でも、それが作品の雰囲気というかリズムだといわれればそういう感じでもあって、まぁとにかく猫が沢山でてくるのだけど、どの猫がどの猫なのかがわかりにくかったので、最後にやっとなんとなく理解できたような感じだった。

本には猫の写真も載っているが、保護している子猫たちはどれも柄がそっくりで、認識の参考にはならなかったかな。

結局、著者の近所の猫達に対する必死の活動というのは、地域猫にしたかったのか、里親探しをしたかったのか、外猫が可哀想だから餌付けの延長だったのか、それがあちこち行き来する文章などからよく分かんなかった感じがあって、読んでてとにかく出費など大変そうではあるのだが、なんでこんな大変そうなんだ、っていう疑問もつきまとってた。

そして、餌付けしているマンションのご近所にいる猫嫌いの住人とのやりとりに、かなりページが割かれているのだが、これがなんとも毒気を含むやりとりなので、読むのになかなかパワーがいった。

他にも、元からいるドーラという飼い猫が他の猫に全くなじまないので、そこにも神経を使わねばならず、けど著者はどんどん猫を保護するし、保護した猫のために金はどんどんなくなるし、作者の人も体調不良と対人恐怖症を抱えてて、作中どこにも息つく暇がないというか著者のてんてこ舞いというか切羽詰まってる生活の様子に引っ張られているようで、読後はかなり疲れてしまった。

結局、保護してた何匹かは里親に貰われ、残った猫4匹のために家を買って千葉に引っ越したけど、そこでも裏の家が猫嫌いのようで色々大変なのだった。

猫を可愛がるだけの人間の無責任さ、動物保護の現状の矛盾とか大変さとか、色々読み取るにはいいと思うんだけど、かなり癖が強いのであまり万人受けする本ではないように思う。


この作家さんの作風を知らないので、なんとも言えないのだが、かなり読み手を選ぶ感じなのかな。

文章が自分と合わないなぁというのは強く感じたので、他の作品に手を出すのにちょっと躊躇いがあるな…でも、未闘病記は読んでみたい。