田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

レズビアン刑事が主人公のミステリー小説「ダラスの赤い髪」の感想

年末年始はこの本を読んで過ごしました。
2019年に発売されていて、最近まで全然知らなかったのでこの本の存在を知ってすぐにKindleで購入しました。

テキサス州ダラス市警麻薬捜査課のタフな赤毛の刑事ベティ。
彼女が追うメキシコ系麻薬カルテルの重要参考人が殺された。
口封じなのか、カルテル同士の抗争なのか。
捜査線上に浮かぶのは、元警察官のゴロツキやアジア系ギャング。
さらには南軍に心酔する武装集団まで現れた。
増える犠牲者、混乱する捜査…やがて彼女が直面する国境地帯の犯罪の真相とは?
過去と現在の傷を乗り越えてゆくベティの闘いを描いた犯罪小説。

レズビアンが主人公の海外小説は色々と読んできましたが、王道なクライムミステリー小説でした!

身長180cmで体力に自身のあるポーランド系のタフなレズビアン刑事のベティが主人公。
恋人である小児科医の女性ジャッキーとはラブラブ同棲中。
しかし、NYから移動した新たな職場は保守的なテキサス州のダラス。
マッチョ男ばかりの仕事場では女と侮られ、街なかでは同性愛者差別に遭い、ダラス在住のジャッキーの身内からは娘を誑かした女として嫌われてるベティ。
それでも、やられたらやり返す持ち前のタフさでメキシコ系麻薬カルテルの捜査をイケメンの相棒セスらと共に進めますが、捜査が深まっていくごとに事件関係者たちが犠牲になり、ベティ自身へいよいよ身の危険が迫ってきて…という感じのお話。
レズビアンの刑事が主人公のミステリー小説というと、捜査官ケイトという1990年代に出版された大好きなシリーズがあるんですけど、ハードな内容はこれを彷彿とさせる作品でもあり、とても好みでした。

クライムミステリーらしい不穏な展開も楽しめましたし、恋人ジャッキーとの日常シーンも多くてレズビアンものとしても読み応え有りです。
保守的でマッチョな状況へ立ち向かっていくベティの姿はフェミニズム要素もたっぷりです。

ただ、人がばんばん殺されてグロめなシーンもあったり、特に後半は主人公もかなり危機的な目に遭うので、ハードな内容が苦手な人はちょっと気をつけた方がいいかもしれません。
この作品、前半と後半に大きくわけられるどんでん返しがありまして、後半でガラッと展開が変わります。
後半は性暴力の気配がかなり濃厚になますが、直接的なシーンはなく主人公もなんとか危機を脱するので、そこは安心してください。
ただ、カルト信者で性暴力被害にあった女性がちらとでてきて、それも人種差別と女性を隷属させる家父長制的な構造に追従したところで女がどういう目に遭うか、って顛末を物語っていて上手い。
事件に巻き込まれた女性刑事にどのような現実的な問題が付随してくるか、ラストまでしっかり描かれています。

あと、作中に割と出てくる侮蔑的「レズ」とレズビアンの名称をちゃんと適切に使っていて翻訳も安心感がありました。

訳者あとがきに続編への記述があったので調べてみると、もうすでに三巻まで出版されていてシリーズとして完結しているようです。

(オリジナルの実写な表紙もかっこよくていいな…)

いまは買収されてしまった20世紀FOXでドラマシリーズの検討もされているとありましたが、どうなったんだろ。
続編も同じ翻訳者さんで出して欲しい!