Twitterで流れたきたこの記事を読んで、とてももやもやしてしまった。
牧村さんは1,2年前くらいに深夜のバラエティ番組に出ているのを見たことがあって、レズビアンをカミングアウトしているタレントってことで見てみたんだけど、美人だが喋り口調が叶姉妹のお姉さんみたいな感じで、多分、所属事務所の先輩である杉本彩さんを意識していたのだと思うが、終始「お、おう…」って感じで見続けるのが結構きつかった、っていう記憶がある。
(いまもあの口調なんだろうか)
その後、ライター活動などもされるようになったのか、書籍やTwitterの発言などをちょくちょく見かけるようになったが、彼女の意見に個人的にはうーん…ってなることが多くて、意識的にちょっと避けていた。
それが、先日たまたま上記の記事が流れてきたので、なんとなく目を通してみたら、案の定「うーん…」ってなった。
この記事の内容、彼女のレズビアンをカミングアウトしてるタレントっていう立場で、芸能界で生き残る生存戦略としてなら、ご自由に、と思う。
でも、この記事は彼女のタレントとしての生き残り戦略ではなく、性的少数者の人権問題についての記事なわけで、そこで同性愛者への嫌悪発言で侮蔑されたのに、
「理解できない人に怒鳴り続けるのは自分がすっきりしたいだけ」
って展開にしたり、
聞いてくれないのが悪いのではなく、楽しく話せば聞いてくれる。
ってまとめたり、マイノリティ自身が怒りの主張に対して、それは上から目線とか「私はもうそこは卒業しました」、みたいなやれやれって立場とるのって、私が物凄く嫌いなスタンスだ。
例えば、この前のこの記事。
『世間が興味を持つのはそこだろう』と思ったのか、一部の記者から『性生活ではどちらが男性役なのか』『どのような手順で』『オモチャの使用は』など、生々しい質問が続いたんです。地上波のワイドショーはもちろん、ほとんどの新聞も書けない過激な内容が連呼される事態となりました。
牧村さんのスタンスを一般化されちゃうと、こういうことも笑顔で対応しましょうってことになっちゃうわけじゃん。
こんなの当たり前に激怒していいわけで、理解のなさや同性愛嫌悪を「意見の違い」ってしちゃうのって、本当がっくりくるんだよね。
幼稚園児に言い聞かせる親じゃないわけで、人権の話なわけじゃん?
自分の足踏んでる相手のご機嫌伺いしながら楽しく話しましょ、ってまだそんなことを言ってんのか、っていう。
そうやって被差別側が優しく楽しく言わなきゃ話も聞かない相手ってのは、本当に問題を理解して、認識を改めてくれるのかね。
自分を居心地悪くさせない言葉しか受け入れない人間が差別の現状を受け入れるなんて、私はかなり疑問に思う。
そして、これ。
「私は22歳になるまでフェミニズムという言葉を知らなかった。大学にも行けて、選挙権もあって、女性であることを理由にした差別を感じたことがなかったから。レズビアンも同じ。差別が消えれば、言葉は消える」
正直、これはいくらなんでもないだろ、って思った。
女性差別を感じたことなかったって、すっごい恵まれてるのか、鈍感なのかわかんないけど、それはこれまで女性の人権に対する運動で戦ってきた人たちがいたっていう歴史があったからなわけで、そこはずっと語りついでいかなきゃいけない部分じゃね?
牧村さんはアイデンティティのむかが幸せな差別のない社会だと思ってるみたいだけど、私はこのアイデンティティを大切にしてます。そしてむかすることは歴史を軽くみることだと思う。そして、差別はなくならない。かつて差別されてた記憶をなくすことはできても。完全に平等なんてありえない。
— gli (@jmjmjmililil) 2015, 1月 8
その恵まれた環境のまま生きていける人はそりゃいいよ。
美人で白人の彼女がいて、牧村氏自身も美しく(ミスなんとかに選ばれたとか言ってた)、海外で結婚までして、こうしてインタビュー記事になるくらいレズビアン界隈でそこそこ発言力があるっていうのは、かなり高いステータスだな、と思う。
私なんか足元にも及ばない。
だから、そういう人が下衆なこと言われても怒らず、マジョリティにとって耳障りのいいことばかりいうタレントっていうのは、メディアではかなり使い勝手がいいだろうし、そこが物凄く厄介なとこだなぁ、と思う。
色んな主張がある中で、彼女の耳障りのいい言葉を世間が耳を貸す基準にしてしてもらっては困るのだ。
ある人が、自分自身の戦略として、怒らず穏やかに主張すること自体はいいと思うんだけど、その戦略は黙ってやる方がいいんじゃないかと。正当な怒りをちゃんと表明する人を脅かしたいわけでないなら。まあ、この記事自体全部本人の言いたい通り書かれていない可能性も加味しなきゃと思うけど。
— 宇井彩野(百合人企画) (@niyari_niyari) 2015, 1月 8
自分も真っ向から怒りを表さず別の方法を取る時も多いけど、それは自分自身が削られるから、という理由でもある。真っ向から怒りを表明して対決している人を見ると、私ができないことをやってくれてると考える。自分ができないからって、「やめときゃいいのに」と考えないようにしている。
— 宇井彩野(百合人企画) (@niyari_niyari) 2015, 1月 8
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