田舎で底辺暮らし

孤独に生きながら雑多にあれこれ書いてます。

「セルフ・ネグレクト」としてのゴミ屋敷問題

昨日からサイトの引っ越しってどうするんだろう…と悶々としていたので図書館で調べてみようと思ったら、どの本もFC2の無料ホームページを使う方法しか紹介してなくて、微塵も参考にならなかったぜ…。
がっかりしながら本棚をウロウロしていたらこの本を見つけた。

ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 (幻冬舎新書)

ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 (幻冬舎新書)

タイトルはなんだか強烈だけれど、中身はちょっと違う印象を受けた。

セルフ・ネグレクト」状態の人たちが、結果的にゴミ屋敷に住まざるを得ない状況に追い込まれている、その原因と支援方法などを、筆者の体験などから実際の事例をまじえて綴ってある。

セルフ・ネグレクトというのは、文字通り自分に対するネグレクトである。
ネグレクトというのは、育児放棄としてよく聞く言葉であるが、その自分バージョンだ。
自分への放置
自己放任ともいうらしい。

じゃあ実際どういうのがセルフ・ネグレクトなのかというと、こういうものがある。

・身体が極端に不衛生
・失禁や排泄物の放置
・住環境が極端に不衛生
・通常と異なってみえる生活
・生命を脅かす自身による治療やケアの放置
・必要な医療・サービスの拒否
・不適当な金銭・財産管理
・地域の中での孤立

これらがセルフ・ネグレクトの特徴であり、この中に一つでもあてはまる場合はセルフ・ネグレクトの疑いがある。


この本で紹介されていた実際の具体例は、やはり一人暮らしの高齢者が殆どだった。

身体的な衰えから片付けられずにゴミを貯めこみ、風呂はもちろん、トイレも行けずに汚した下着や排泄物を部屋の隅に放置する。
しかし周囲には自分の衰えを知られたくないので、事実を隠し支援を拒否して、どんどんと家が汚くなるという悪循環がおきる。

ゴキブリだけではなく、ネズミがうろつくような不衛生な環境で、抵抗力の低い老人が生活するのは非常に危険である。
しかも、物が多いので転んだりして怪我が絶えないのだ。

しかし、そういう人たちは自分の衰えている状態を他人に見られたり、ケアされることを物凄く嫌うので、まずは担当者が本人へこまめに会いに行き信頼関係を築く必要があるなど、とにかくゴミを片付ければ全て解決、というわけではないところが色々と難しい部分である。

あとは認知症で日常生活が難しくなり、どんどんと部屋を汚してしまうケース。
これは本人に了解を得て、ゴミを捨てても、そのことを覚えていないので、後日揉めるなど色々と大変なようだ。
大体は、その家のトイレの状態を見ると認知症がどうかが分かるらしい。
そういえば、今年亡くなった私の祖母も認知症だったが、オムツをそのままトイレの便器に落としたり、便座を尿で汚したり、とにかく大変だった。

中でも気になったのは、妻に先立たれたり離婚された男性のケースだ。
それまで家事や料理などを全部妻任せにして何も出来ないので、妻の存在がなくなると、生活が立ち行かなくなる。
しかも、男性は女性に比べて人間関係の幅が狭く孤立しがちであるのに、プライドばかりが高かったりするので、支援を受け入れずに家がゴミ屋敷化しやすいらしい。

厄介なことに、妻の金を当てにしDVをはたらいて、とうとう妻に出て行かれて、残された男は金もなく生活力もないのでゴミ屋敷化したというケースがあった。
もう、これは正直、自業自得でしょうとしか思えなかったのだが、こういう人間でも支援しなければいけないケアワーカーの人たちは大変だ…。

あと、孤立死も女性に比べると圧倒的に男性が多いというデータが紹介されていた。

確かに、夕方になると友人らしきおばさんたちが連れ立って、おしゃべりしながらウォーキングしてるのはよく見かけるんだけど、おじさん二人がそうやって楽しそうに歩いている姿ってまず見かけない。
一人、もしくは妻らしき人と歩いている。

男らしさに拘るマッチョ社会って、個人主義というか核家族化した現代社会では、人間関係の構築の枷になっている点でも、色々とマイナスなのかも。

生きる支えとなる人間関係の相手が妻しかいないと、老後は大変なようだ。


問題はセルフ・ネグレクトの人は極端に支援やケアを嫌うことだ。
ゴミ屋敷に住んでいる人たちは、何かしらの慢性疾患を抱えていることがとても多く、その結果、孤独死を迎えることが少なくない。

医療ケアを申し出ても、本人が嫌がるので強制することも出来ずに、後日、住人が死亡したという事例も綴られていた。

ゴミ屋敷に住む原因には、人それぞれに複雑な事情があり、支援やケアは他人の手を煩わせる恥ずかしいものとする日本社会の空気も、原因として少なからずあると思う。
日本社会が抱える高齢化と貧困は、セルフ・ネグレクトを招く大きな要因で、これは他人ごとではい。

本書には無一文にならないと生活保護支援をうけられない問題点についても綴られていたが、柔軟な支援体制の充実がないと、こういう人たちの救済は色々と難しいだろうなぁ。


そういえば、うちの近所にもゴミ屋敷があった。

古い木造家屋に、明らかに不衛生な身なりの男性が住んでいたが、どうやら火事になって、その家は消滅してしまった。
その後、男性は空き地にテントを張って生活していたようだけれど、空き地はゴミだらけでひどい状態だった。
それらもいつの間にか撤去されて今は単なる空き地になっているので、男性はどこかへ引っ越したのか、それとも亡くなったのか…。

片づけの解剖図鑑

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